No.340


2021年 1月 睦月

 2021年。きょうは一月七日、松の内。
 大きな声で、明るく 「明けまして、おめでとうございます!」
 とご挨拶したいところですが、
 なんと緊急事態宣言と同時になってしまいました。

 昨年は、長くも感じたし、あっという間にも思えるし……
 とにかく、一生懸命「今日」という「その日」にくっついて行くので精いっぱい、と云う感じ
でした。
 きっと、その点では、「私も同じ」とおっしゃる方、多いのではないでしょうか。
 で、一生懸命考えてなにかをしても、答えがみつからないので、正直疲れましたね。




 さて、お正月、私の定番は駅伝をみること。
 大好きです。
 特に応援している学校がある、と云うことではなく、
 ここにくりひろげられる人間ドラマに、非常に惹かれているのだと思うのです。

 今年の展開は、ここ数年私が記憶にある中でも、最もドラマチックでした。
 ここ10年間を見てみると、圧倒的に青山学院大学が強かったのですが、今年はどうした
わけか全くふるわず、
 往路はなんと12位、シード圏内にも入らない……  「エーッ、あの青学が?」と
テレビを観ながらびっくり。

 で、往路の先頭は創価大学!
 新人が突然飛び出してきた、といった感じで、これも又びっくり。
 競馬でいえば、誰も予想していなかった大穴って云うんでしょうか。
 翌日の新聞の見出しは
 「創価大驚走 往路V」
の文字が躍っていました。

 この大学の駅伝出場は4度目の、いわば新入り。
 昨年10月の出雲全日本大学選抜駅伝はコロナで中止。
 11月の日本大学駅伝は書類選考で落選。
 といったプロセスを経て、ロードでの駅伝実践がないまま、ただひたすら
「駅伝を走りたい」と云う純粋な渇望の末での出場とのこと。
 そして、そのひたむきさが力となった、と云うのですが。


 又、もう一つ見逃せないのが、4区を走った島津選手の存在で、目の病気で一度休学。
9月に復学し「以前はチームメイトが自己ベストを更新したら素直に喜べなかったが、
復学してからは、チームの成長を素直に喜べた」と、精神的に一回り大きくなっての、
今回の見事な走り。

 この4区を引き継いで、山登りの得意な三上選手が余裕で箱根の山を駆け上り、往路
優勝、となったわけで、筋肉がどうの、足がどうのも大切ですが、こうした精神的ゆとりが
もたらす効果って、大きいのですね!




 と、まァそんなわけで迎えた次の日もハレ。
 箱根を下り、湘南を駆けぬけ、東京に帰ってくる復路がはじまりました。

 ず~っと創価大が先頭でした。
 それも、ぶっちぎりの先頭で、確か二位とは2~3分離れていたはず。ですから、この
まま優勝だと、みーんな思っていたと思う。
 ところがです、ラストの10区で、なんと駒澤大学の石川選手がひたひたと間を縮めて
きたのです。

 そして創価大を抜く瞬間がすごかった。
 一度、ピタッと、背後にひっつく。
 でも、創価のアンカーは、一寸フラフラしているようで、スピードは全くあがらない。
 その相手の呼吸をグワンとのみ込むようにして、一気に前に出て、いやすごいすごい、
よくもこれだけ力が残っていると思えるほど、一気にスパート。
 まるで、ステップを踏んでいる軽やかさで、相手をはるか後に置き去りにして一気に
ゴール!
 駒澤大が一位でゴール!です。

 はァ~ こんなことが、起こるんだ!!
 もう、本当に興奮するほど驚きました。
 と同時に、ずーっと一位を走ってきた創価大メンバーにしてみれば、もうあと一歩で、
優勝と、疑ってもいなかったのに、最後の最後に「なに?なにが起こった?」といった心境
だったでしょう。
 中でも、この10区のラストランナー・小野寺選手の心の中を思うと、そっちの方が気が
気ではありませんでした。
 もし、これが私なら、自分を責めて責めて生涯傷だらけだ! なんて心配でした。

 でも、ゴール後、監督は、
「この悔しさを忘れないで、次に生かせばいい。決して卑屈になるな、堂々として欲しい」
と、担架で運ばれた小野寺選手に、優しいまなざしでエールを送ったそうです。

 「すごいなァ、この榎木さんという監督、大きい人だなァ」
 私も、若かった頃、こういう大人に出会いたかった。
 そして、今、私は、少しでも、こうした懐の深い、相手を丸ごと受けとめられる人になりたい。
 と、しみじみ感じ入ったわけです。




 さらに又、もう一つ青学のこと。
 もう、メタメタにダメだと往路では散々だった青学大が、なんと四位まで盛り返したことも
心ゆさぶられました。
 もうちょっとで、三位になれそうな勢いの四位です。
 王者の意地、とでもいうのでしょうか。お見事!

 この巻き返すエネルギーがどこから出てきたのか、エピソードは山ほどあるのでしょう。
 とにかく、青学大・原監督へのインタビューで、この人がやわらかい笑顔で
「いやァ、生徒に教わることばかりでした」と答えていたのが、印象的でした。
 少なくとも選手たちと、監督との間の風通しの良さが自然にこぼれ落ちたひと言とみて
とれて、安らぎをもらいました。




 そう、私たち人間って、お互いに信じ合える間柄だと、楽しく底力を発揮することが出来る。
 相手から認められ、それを言葉にして褒めてもらえたなら、「よし、やるぞ!」と素直に
発奮できるもの。
 多分、うまくいっているグループは、そこが強さの基盤にあるのでしょう。
 ただ強いだけではなく、なんともさわやかで、人間の優しさを、具体的に肌で感じ、信じ
ることができる駅伝でした。




 そして、私は、主宰している朗読「水の会」に駅伝を重ね、
「駅伝と全く同じ!」
と、心を熱くしていました。自信ももらいました。

 私たちjは、一つの作品を、一人づつ読み継いで行き、バトンタッチしながら目的に
ゴールする、と云う朗読のリレー。
 オリジナルな表現の方法で、この14年活動を続けてきました。
 「上手く」より「伝える」を目指して。

 この14年、指導してきて痛感していることは、
 まずは、その人がどのような声や読み方であろうとも、その人間性を、まずは丸ごと認め
相手を受けとめること。そして、声に出して誉めること。
 そのことの大切さを、どれほど学んできたことか!


 かつて小3で戦争のため孤児になり、流離っていたチビの私に、
 その会津若松・行仁小学校の女の先生は、「みなさん、今井さんのように、大きな声で
返事しましょう」と、誉めてくれた、その一瞬を、たった今も、きらめく思いで思い返すのです。
 父は戦地。母も亡くし、親戚はどこも引きとってくれず、大人の顔色ばかりみて暮し、
小学2年生なんて、どこの学校にも入学させてもらってない。
 だから、足し算引き算がやっとで、転校生の上にきっとクラスのお荷物だったに違いない
のに、
 それなのに、私を丸ごと抱え、唯一持っていた「声」の大きさを、皆の前で誉めてくれた
先生!

 そう、だから今の私が在る。
 アナウンサーにもなってしまった。
 あっちもダメ、こっちも能力不足と、絶望や不安ばかりの中でも、「私には声がある」と
心の中に、消えない光を持って人生を踏みわけてくることができたのだと、確信して感謝
しています。
 人間って、そんなものじゃないでしょうか。
 その方が、お互いにずっとハッピーですし。




 このコロナの行方はよく分からないですが、五木寛之さんが、奥深い、示唆に富んだ
発言をしていらっしゃいます。

 「今は、下山の時代だと認識しなければならない。山を登っていくときと比べ、熱量も、
エネルギーも、体重のかけ方も違う」
 「けれども、下山の価値が劣ることは絶対にない。登山に増していいことがある。
 ゆっくり遠景を眺めたり、高山植物に目をやったり、来し方行く末を思ったり、成熟した
 人間の喜びを感じることができる。
 コロナはそれを気づかせてくれたかもしれない」

 あなたは、この言葉の中から、何を感じ、読みとり、どうご自分に活かしたいと、お考えに
なるでしょうか。




 確かに、しっかりと自分と向き合う時間は、ふと足元に咲く道端の小さな花にも目を注ぐ
ことができる「とき」を与えてくれています。

 私は、なにかと云うと、反省を全て自分に返し… いえ、返し過ぎて、自分を責めること
ばかりしているので、
 「自分」の良さを、自覚したい、な。
 あの「卑屈になるな、堂々としている」とエールを送った駅伝の監督のように、
自分にエールを送り、自分に感謝できるほどに、平らかに己を解放して、己の良さと出来
の悪い所を客観視できるようになりたい。

 卑屈と謙虚は、似て非なるもの。
 自分に感謝できるようになれた時、私はきっとさらに一般的な「感謝」ということを、
もう少し深く悟ることができるのではないかな。
 と、下山の心境で、思考する今なのです。

 そして、みんなからたくさん学ばせてもらいたい!
 みんなと直接逢えない、
 と、プレッシャーがかかればかかるほど、相手の存在が大切で、その人が愛しいし、
 その絆の大切さを、ダメと云われるから逆にもっと大切だと認識できたのも、コロナだったから。

 その一つ一つを受けとめながら、
 下山の心境を確かめながら、
 今年も船出しましょう!

      「今年もどうぞどうぞ よろしくおつき合い下さいね。
       そして、「ありがとう!」  」

                                        2021年 1月 7日
                                            
                                            今井登茂子
                                                                                              



 
NEWS

 2019年
  
  初めて福島での「水の会」音楽朗読会が開催されました
  「大切なものは 目に見えない in 福島2019」
            こちらから


   「大切なものは目にみえない2019 水の会クリスマスチャリティコンサート」
   (2019年12月22日開催)
            こちら から