No.362
3月 弥生

 皆さま、お元気でいらっしゃいますか!
 寒暖差が、身体にこたえることもありますね。

 窓辺に、おひな様を飾りました。
 と云っても、私の誕生を祝って父母が買い揃えてくれた中の、三人囃子だけです。
 お内裏さまなど、あとのおひな様は、いつ、どこで消えてしまったのかは不明です。
 戦争の中、焼けずに、笛・鼓・太鼓の三体だけでも、86年もの時を生きぬいてきた、
と、思うと、少し汚れてしまっているけど、とても愛しい存在なのです。

 そして、掌にのるほど小さなこのお人形さんを見ていると。
 父母の第一子として生を受けた私が、どれほど愛されて育ったことかと、しみじみ心が
柔らかくなってくるのです。


 実は、そうは云っても、信じられない歴史もありました。

 と云うのは、継母が、この人形を自分のものにして返してくれないのです。何度返して
欲しいと頭を下げても返してくれませんでした。
 「私のものなのに、……どうして?」

 で、継母が亡くなったあと、はじめてこの三人囃子の三人のかわいい子供たちは、私の
もとに戻ってきたのです。ちょっと信じられない話でしょ。
 でも本当のことです。

 だから今、誰にもじゃまされず、日だまりの中で見ていると、ほっとするのですね、とても。
 そして、多分、
 天国に居る母も、「よかった!」とほっとしているんじゃないかナ。
 だって、継母が、「絶対に渡さない」と、自室にしまい込んでいた年月は、9才~還暦過ぎ
までの、実に何十年もの話なのですから。

                   



 私は、今、せっせと終活中です。
 終活と云うと、あなたは何を想像なさるでしょうか。
 もしかしたら、「私も!」と、せっせと終活ingの方もいらっしゃるかもしれませんね。

 まず、誰もがピンとくるのが、物の整理。
 現在は、終活アドバイザーという職業もあるくらい、整理するのは当たり前の世界で、
 やれ、タレントのAさんは、トラック何台も、物を処分した、とか、耳にします。

 でもね、洋服は目下のところ、「捨てたいものがほとんどナイ」
が、私の現状。
 大好きなピンクの半袖Tシャツは、実に50年目。かなりくたっとしてきましたが、その
よれた感じを、ビンテージ風に着こなす面白さを楽しんでいます。
 だから、洋服類は、ナシ。
 ただし、靴はオールペッタンコにしたので、ヒール類は全て処分しました。

 など、などで、写真については、とにかく、残して迷惑にならないよう、超コンパクト(写真
は、「旅・友人」などタイトルに分類し、十分の一に)にしてあります。
 膨大な数の本は、目下、全目録を作成中。
 といった風にです。




 で、その中で、はっきりと見えてきたことがありました。
 それは、「残す」と「遺す」の区分けです。

 「これはまだ使えるから、残す」にくらべて、「遺す」は、「後世に伝える」など、「伝える」
意味が大きい言葉。




 この伝えて行く「遺す」の中でも、不動産など物やお金ではなく、
 ノウハウや、技術など、直接目にすることができない部分を、意識して、可能な限り
伝えて行く事。は、私の中での目下の終活そのもので、今後の、生きる目的そのもの、と云っても過言ではありません。


 主宰している朗読「水の会」は、このコロナにめげず、歩みを止めず、いろいろ活動して
きたことは、これまでにもこの季節のたよりの中でご報告して参りました。
 それは、動画だったり、ニュースペーパー作りなどなど色々あり、で、タメになりました。

 で、たった今は、恒例・夏の長崎朗読会に向けて、東京メンバーは、台本執筆に
挑戦中!
 みんな夢中です。
 いつもは、与えられた台本を読むだけなのに、「こんなこと、はじめて……」
と戸惑いながらも、生れてはじめての挑戦を楽しむまでになりました。

 そして、目的は…、そう、まずは立派な文章を目指すよりも、「相手の心に響く言葉を
紡ぐには」が、一大目標です。
 その、ポイント、ポイントを手引きしながら、
 一つの言葉が、説得力をもつには、なにが必要なのか、についての、
マンツーマンレッスン!

 指導する私は、大変ですが、それ以上に学ぶことが多くて、充実した時間をもてて、
ホント―に幸せ!
 「つまりね、これって、何が云いたいの?!」
 「うん…… そうですよね……」
 と云う会話を、一人一人と交わしながら、私の頭の中や身体の中にあるものを伝え、
その人に遺していきたい!

 その真っ最中です。と云うわけで、
 「遺す」方の終活も、順調に前へ進行中、といった日々を過ごしています。





 この日射しの明るくなってきた三月。
 皆さまも、明るく、お元気でありますように!
 いつも、この「季節のたより」をお読み下さって
 ありがとうございます!





                                            2023年 3月
                                            今井登茂子
                                     
                                                                                              
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